過労死防止大阪センター

「命より大切な仕事はありません」遺族の思いを訴えています

過労死を考える家族の会 寺西 笑子

 1996年2月、夫(49歳)が過労自死しました。当時、自殺は故意の死とされ労災の対象外になっており国は認定しない時代でした。また申請者側に立証責任があることも知らず証拠も協力者もない中、なす術はなく1年以上何もできず苦しみました。夫が必死に働いたことを根拠に過労死110番に相談し、夫の生きた証を立てたい一心で先の見えない闘いに挑んだのが始まりでした。闘いを巡っては認定闘争に5年、使用者責任追及の民事訴訟に5年余り苦難の連続でしたが弁護団のご尽力と支援者や家族会の仲間から「あきらめたらあかん、負けたらあかん」と励ましを受け続け大きな支えがあればこそ10年以上最後まであきらめず悔いを残さない闘いで終えることができました。教訓として、過労死はまじめで責任感が強い人が被災する極めて理不尽な出来事。認定、勝訴しても死んだ人は生き返ることはない。死んでからでは遅い取り返しがつかないことを痛感しました。どうすれば夫は死なずにすんだのか考え行動することが私のライフワークになり活動しています。

 2014年6月に過労死防止法が制定され、11月は過労死防止啓発月間となり、47都道府県48会場で啓発シンポジウムが開催されます。また、年間通して中学・高校・大学・専門学校を中心に啓発授業が開催され、主に弁護士から労働条件や労働法に関する講義と過労死等の遺家族から家族を亡くした体験を語ります。

 私は過去の反省から正しい知識があれば身を守れたのでないかと思うところがあり、「社会へ出る前に正しい知識を身につけましょう。命より大切な仕事はありません」というタイトルでお話しています。

 いまや過労死等はあらゆる職場で発生しており、そこには悪しき慣習が根強くあって労働時間等の過少申告が横行しています。そんなとき正しい知識があればおかしい働き方に気づくことができます。不当な働き方に気づけば信頼できる専門・公的機関へ相談すること。知識を身につけて自分の命と大切な人の命を守ってください。「命より大切な仕事はありません」過労死防止の一助として、遺族の思いを胸に刻んでいただけるよう訴えています。