過労死防止大阪センター

【コラム】過労死をなくしていくために 企業による権利主張の妨害に歯止めをかける必要性

過労死防止大阪センター 幹事
NPO法人POSSE
岩橋誠

NPO法人POSSEは、過重労働や職場でのハラスメントなどで悩んでいる働く方から無料で相談を受け付けており、解決までのアドバイスや支援をしています。年間1000件以上の相談がメールや電話、LINEを通じて寄せられており、その中には過労死や過労自死に関する相談も多数寄せられています。相談を受けて、労働災害の申請のために必要な証拠の収集や弁護士の紹介などの形でご遺族をサポートしています。

過労死に関しては、毎年200人近いが国から労災だと認められていますが、これはあくまで氷山の一角であると言われています。というのも、日本では毎年2000人が「勤務問題」を理由に自死していますが、実際に自死のケースで労災だと認められたのは100にも満たないのです。また長時間労働やハラスメントによって脳や心臓に疾患を負う、あるいは精神疾患を発症して存命のケースは何十万もあると考えられます。

つまり、「過労死」が起こったとしても、遺族の多くは国からも企業からも補償や賠償を受けることができていません。そのような不正義がまかり通る背景に、企業による労働災害申請の「妨害行為」の蔓延を上げることができます。国から過労死と認められるには労働災害を申請する必要がありますが、基本的には遺族が長時間労働やハラスメント等、職場の実態を示す証拠を集めて提出することが求められます。そこで、企業側は、遺族が労働災害を申請できないよう、また申請したとしても証拠が足りずに却下されるように、様々な「妨害」を行います。

会社で使っていたパソコンが初期化されて戻ってきたり、日報の労働時間が改ざんされていたりするケースは残念ながら珍しくありません。ハラスメントが絡むケースでは、会社の指示で同僚が口裏を合わせて「いじめやハラスメントはなかった」と虚偽の証言をすることもあります。このような妨害行為の結果、長時間労働やハラスメントが「証明」する十分な証拠を集めることができないと、労災が却下される可能性が高くなってしまいます。また、そもそも会社から「これは労災ではない」と言われて、申請を諦めていたというケースも相談の中でよく耳にします。このようにして過労死が「なかったこと」にされています。

そもそも労災申請や企業に対する責任追及をご遺族が一人で行うことは負担が大きいかと思います。少しでも「過労死かもしれない」「仕事が原因かもしれない」と思った方は、証拠の有無に関わらず、支援団体等にご相談いただければと思います。専門家や支援団体のアドバイスやサポートを得ながら、国に対して補償や企業に対して責任を求めていくことができます。