2017年11月2日、「過労死等防止対策推進シンポジウム」開催
2017年11月2日、厚生労働省の主催で「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催されました。485名(企業関係者が8割超)の参加者で大成功しました。
シンポジウムは、坂口智美(フリーアナウンサー)さんと山中有里さん(過労死防止大阪センター幹事、弁護士)の司会で、まず小島敬二大阪労働局労働基準部長の主催者挨拶で始まりました。続いて、「報告Ⅰ」を神田哲郎大阪労働局基準部監督課主任監察官、「基調講演」を滋賀大学名誉教授の大和田敢太先生、「報告Ⅱ」を関西大学名誉教授の森岡孝二先生、「過労死遺族の訴え」を4名の遺族の方が行いました。最後は松丸正弁護士(過労死弁護団全国連絡会議代表幹事)の閉会挨拶でシンポジウムを締めくくりました。
小島敬二部長は厚生労働者の過労死防止対策の取組について語られました。過重労働等撲滅のため取り締まりを行っていること、「働き方改革」について取り組んでいることなどを話されました。
「報告Ⅰ」で神田哲郎大阪労働局基準部監督課主任監察官から監督歴30年の経験をもとに「大阪労働局の過労死防止の取組」と題して報告がありました。神田哲郎主任監察官は、大阪府における労働環境の現状について報告された後、大阪労働局は過重労働による健康障害を防止することが最重要課題と位置付け、労働者が安全で健康に働くことができる職場づくりをしていくため監督指導等による取組を行っていることについて話されました。
報告の中で「新ガイドラインによる労働時間把握の徹底」が企業の責任においてされる必要があること、司法処理件数として平成28年度は違反送検が全体で80件、労働時間に関する違反送検が17件に及んだことを述べられ、企業として過重労働対策を進めていくことが重要であると強調されました。
「基調講演」の大和田敢太先生は、「過労死とハラスメント」と題して講演をされました。
その中で「過労死のない社会=ハラスメントのない社会」であり過労死の陰にハラスメントの存在があり過労死こそハラスメントの典型であること、さらにハラスメントの起きやすい企業の特徴について述べられたうえで、企業のハラスメントの対策についてもわかりやすく解説されました。
講演の中でハラスメントを「実行者の個性」「実行者と被害者の人間関係やコミュニケーションの問題」と考えることは間違いであり、その立場に立つ限りハラスメントは解決しないこと、「長時間労働そのものがハラスメント」であること、「実行者は企業の中によく溶け込んでいて、十分な信頼感を得ているため、その行動を容易に正当化し回りの人間もハラスメントを当然のことと認識している」等述べられ、ハラスメントを企業経営に関わる問題(構造的な要因)と考えて対策を行う必要があることを強調されました。
「報告Ⅱ」で森岡孝二先生は「過労死防止法制定から3年、取組と現状」と題して報告されました。森岡孝二先生は、過労死防止法の原点は過労死110番にあること、労災請求状況にみる過労死の現状、働き方改革法案要綱への疑問について話をされました。
報告の中で、依然として過労死は減っていないこと、逆に過労自殺(とくに若年層で)が増え続けていること、「働き方改革実行計画」は過労死防止法に逆行していることを述べて過労死防止対策をさらに推し進める必要があることを強調され、過労死対策として「賢い労働者になろう」と呼びかけられました。
大阪過労死を考える家族の会4名の訴えは、「何としてもこの日本から過労死をなくしたい、自分たちのような悲しい思いをする家族をこれ以上つくらない…」という強い思いの臨場感溢れるもので参加者の涙をさそい、様々な立場の企業関係の人々も含めて「過労死はあってはならない」と全員の心をひとつにするものでした。
最後に松丸正弁護士が「これ以上の悲しい家族を出さないためにみんなで力を合わせて過労死をなくしましょう」と力強く訴えてシンポジウムを締めくくりました。
今回のシンポジウムには大変多くの企業の担当者に参加していただき、参加された企業関係者の真摯で熱心な姿勢は、必ずや過労死防止の取組みと過重労働対策を行っていただけると感じた大変意義深いシンポジウムとなりました。
この大阪から日本から過労死をなくすための取組をさらに進めていきたいと思います。
過労死防止大阪センター
事務局長 柏原 英人